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伊藤 洋子 の 詩

矛盾

 画集の中から抜け出してきた女。お前にはもうひとりの自分というものが必要なのか。できることなら分身の術とやらを使いたいだろう。わたしとしてもわたしに忠実なお前を永遠に残しておきたかった。だが甘かったね。そんな術を使おうなんて一〇年早かったのさ。いや、お前が抜け出してくることそのものがやはり早過ぎたようだ。画集の中で多くの人人に鑑賞されるだけでも充分なことではなかったのか。体中に木目のある女よ。それほどまでに、もうひとりが必要ならば、このわたしが今ここで、まっぷたつにしてあげよう。
 マグリットは嘆くだろう。抜け出したお前の姿を見て、さらに、まっぷたつにされた姿まで見たら……。迷っているなら、逃げるがいい。戻るのではなく、逃げるがいい。
 まっぷたつになってしまったお前(或いはお前たち)は、その日から早速、最も確かな生き方を始めるだろう。
 右半分しかないお前は、肉体を売り、左半分だけになったお前は歌を歌っていくのだ。わたしのことなど、当然眼中になくなるに違いない。嘘つきたちめ。手におえない嘘つきたちめ。救いようのない嘘つきたちめ。画集の空間には戻らないというのか。
 マグリットは嘆くだろう。抜け出したお前の姿を見て、さらに、まっぷたつにされた姿まで見たら……。誰の目も素通りしてはいかない程、存在感のあるお前。体中に木目のある女よ。誰も指示しない。最終的に決めるのは自分なのだ。画集の中から抜け出して、すぐにわたしの目の前に現れた惑いと羞恥がまだ残っているうちに動いていくがいい。


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