電話をかけているのは
私ではない
この病院の婦長だ
私は病室に入れない
自分の家に電話をかけることもできない
昨日
姉と私はエプロンをつけたまま
担当の医師に呼ばれた
午後五時過ぎの廊下
オ気ノ毒デスガ
アナタ方ノオ母サンハ
後一週間グライデス
ドウカ
ソバニイテ話ヲ聞イテアゲテ下サイ
あれは確かに昨日の話
一週間といわれたのに
今
婦長さんは私の家へ電話をかけて
あなたが死んだことを伝えている
病室ではあなたの湯灌と化粧が行われている
私の居られる場所がない
私の話す言葉もない
まるで産まれたばかりの子供
私は今あなたから産まれたのかもしれない
あなたの死から私が産まれた
私の誕生日は本当は今日かもしれない
再び入る病室
そこにはあなたはいない
棒紅を持たされた私の手
それがあなたの唇だった部分を染める
私は生きたいのだろうか?
私は生きられるのだろうか?
化粧が終わるより速く
ここを離れていってしまった
あなたの年齢まで
list |
---|
伊藤 洋子の詩 |
poem |
---|
詩 |
Top | events | Yoko |
---|---|---|
Ma_ho_Ma_ho_Family まほまほファミリー |
今後の活動 今までの活動 |
伊藤 洋子 詩人 |
navi » サイト内ナビ