TopIto, Yoko 伊藤 洋子

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伊藤 洋子 の 詩

狩りの一族II

葡萄の実
房からもぎとられ
紅い雨が降る
もう四年
紅い雨が降る
母の家を燃やして
母が焼けても
わたしの体は淡(うす)緑色
古ぼけた虫カゴの中から
時々短めのまわらない舌を出して
腐った紅い雨をなめている
雨の色は待てど暮らせど
わたしの体の色にならない

わたしの体の色は
紅くなんかならない
火傷を負った父や姉のように
紅くなんかならない
おまえだけそんな淡緑色
おかしいじゃないか
髪をつかんで泥だらけの靴で
平面の顔や腹を踏みつける
母を燃やした時のような冷い痛み
迷うことなく流れる淡緑色の経血
古ぼけた虫カゴを抜け出し
紅い雨で顔や体を洗う

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