TopIto, Yoko 伊藤 洋子

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伊藤 洋子 の 詩

Yoko's new poems

ここで紹介するものは、[伊藤 洋子 大全 1998] 発刊 以後 に 創作されたものです。

魍魎 (すだま) のいる3月

私の体の上にすわっているのは
一貫にも満たない魍魎
角も牙も尾も羽根もない
紫色のからだと涙
そしてこの大きな瞳だけ

しかし
角も牙も尾も羽根も
ほんとはある
いったい誰が知っていよう
私もきっと忘れてしまうのか
こいつが魍魎であった日のことなんて

 

お願いです
もう一度抱いてください

 

 

ああ
誰か来る
ドアが開けられてしまう
魍魎と交わった果ての
おぞましい私の姿が
他人に見られてしまうのです
私はおぞましい
(私は美しい
汚れているのに
こんなに美しい
血にまみれているのに
こんなに美しい
腐っているのに
こんなに美しい)
血だらけの私の体 ......

他人の目玉に吸い込まれていく
冷たい部屋
みんなどこに行ってしまったのか
私の体は寝台の上にいる

 

お願いです
もう一度抱いてください

 

こんなに汚れているのに
私は輝いている
(私の体に翼は生えない)
こんなに腐っているのに
私は美しい

私は魍魎を陵辱した
私は魍魎を殺した
私は魍魎を堕落させた

胸が痛い
頭が痛い
腹が痛い
首が痛い
腰が痛い
背中が痛い

広がっていく
私の体についてる
すべての穴という穴が
広げられていく
汗が吹き出す
白い雨が私の体中に降り注ぐ
部屋中が真っ赤です
私の体がふわふわ浮いています

魍魎は私の中に入ってきて
思いっきり暴れまくり
やがて
死んだ

 

ああ
もう一度
抱いてほしかった
思いっきり
私の穴という穴をかきまわしてほしかった

 

私の股間から流れる一筋の赤い血
そして汗
水が飲みたい
私の目玉が左右ばらばらに飛び出した
鼻からも血が流れ出す
肛門からも血が流れる
髪がごそっと抜ける
枕が真っ赤
シーツが真っ赤
部屋が真っ赤
私の体がふわふわ浮く
魍魎を体の上に乗せたまま

私は美しい
汚れているのに
こんなに美しい
血にまみれているのに
こんなに美しい
腐っているのに
こんなに美しい

 

私は魍魎を陵辱した
私は魍魎を堕落させた
私は魍魎を殺した

もう一度
抱いてほしかった
もう一度
抱いてあげたかった
もう一度
抱いてほしかった

 

私は魍魎を殺した

もう一度
抱いてほしかった

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