父は昼寝の後
ビールと小玉スイカを置いて
ひとりで帰っていった
わたし
と
生まれたばかりの子供
酒直(さかなお)のあの家へ連れて帰りたかった
わたしは東京(ここ)に残ると言った
帰ったところで父は昼間は仕事
72になる父の従姉は丈夫である
自転車で通ってきて
子供を毎日お風呂にいれてやるつもりでいた
母のいない家
わたしが初めて産んだ子供
やはり母には見せたかった
もう少し大きくなったら連れて帰るね
そんなに遠くないから気軽に遊びにきてね
世話好きなもうひとりの人物
9つ違いの父の妹には電話ではっきり言った
父は去年家を建てた
いつか
わたしが戻ってくるのを待っている
愛車だったハーレー=ダヴィットソンを売ってしまった
(未だに訊くことができないでいるが
祖父の残したあの土地も売ったのだろうか)
借金をしないで建てた
6畳の和室が上の階と下の階それぞれ2部屋
ずつある家
台所は板の間
初めての瓦屋根
父は去年家を建てた
いつか
孫が電車に乗って
遊びに来るのを待っている
わたしは東京に残ると言った
父は5月に入ってから
毎日のように電話をかけてきた
産後3日目
午後1時過ぎだったと思う
病院にも来た
赤ん坊の寝顔を見て
ひとりで帰っていった
わたしは退院後 東京に残るとその時は言わなかった
父は去年家を建てた
いつか
わたしが戻ってくるのを待っている
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