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伊藤 洋子 の 詩

蝋燭のある部屋

 

 

皆んな帰っていった
柱時計を十五分進ませておくのが好きだった
もうすぐ一時
姉と私の部屋
離れの二階にある六畳の洋間
今夜は階段を上らない
今夜は階段を上れない
停電が多かった頃
いつも蝋燭に火をつけてくれたあなた
今夜はよく燃えています
あなたはどこにいるのですか?
朝が来たら私は
アルバイト先に電話をかけるでしょう
わかっています
あの日しばらく休むと告げた時も
いい返事はしてくれなかった
あれから何日だっただろう
もうずっと上り電車に乗っていない
あなたはどこにいるのですか?
タンスの中にしまってあります
あなたが縫うはずだった反物
出来上がらなかった着物
明日でないとしても
いつかは返さなければいけない
あなたはどこにいるのですか?
物置の奥にしまってある
緑色の小さい自転車一台
去年の十一月迄は乗っていた
もうしばらくあのままにしておきます
あなたはどこにいるのですか?
わたしはみつけたい
あるいてみつけたいんです
あなたを


*** [蝋燭] の [蝋] の字のツクリは、本当は [臘] のツクリと同じ。
**2 [蝋燭] の [蝋] の字のツクリは、本当は [臘] のツクリと同じ。

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