かつて
あなたの生まれた家は
あなたが今
眠っている近くに
あったらしい
何度そこを訪れても
確かな場所さえ
わたしには
わからない
わたしを生んだ家と
あなたが生まれた家
同じでないことは
他人でなければわかっている
地相や家相が悪いという理由で
あなたがみっつの時
一家で
そこを離れた
桃色の小さな湯呑み
三毛猫一匹
ミッキーマウスの本
そして
あなたの
父
と
母
あなたの愛したものは
どれひとつ残っていない
わたしは
あなたの母を知らない
あなたの母に逢うことができなかった
あなたの父は
わたしが
みっつの春迄
生きていた
わたしも使っていた
桃色の小さな湯呑み
あなたが血を流した部屋
血の中から始まった四月
乾いた瞳で生まれてきた赤ん坊
きつくからんだへその緒
八畳で始まり
八畳で終わった
あなた
と
わたし
同じ時代を生きてきたのは
ほんの
二十三年間
誰もいない部屋
からだをまるめながら
ストーブに火をつける
わたし
炎が
青から
赤へ変わる
午前一〇時半
わたしが
あなたから生まれた
午前一〇時半
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