TopIto, Yoko 伊藤 洋子

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伊藤 洋子 の 詩

八月の雨

雷が鳴っていると
戸をしめて
電気を消して
寝床にかけこんだ
北雷(きたかみなり) 来たことなし
おそろしいのは
いつだって
カラ雷さ
こぼれた墨は
どんどん広がっていく
一滴も水は落ちて来ない
音が
わたしの背中を踏みつぶす
光が
わたしの首や手足を切り裂く
流れていく血で
床(とこ)に名前を記していく
交わった翌日
左右の瞳の色の違いに
初めて気づいたおとこたち
それぞれの空の下で
じっと待っている
自分のためにだけ
雨が降ってくれると
信じている

彼らの名前が
床の上にすっかり
並んでしまった朝
吠える犬を
木のそばへつなぎ直して
黒く大きな布が
家いっぱいにかぶせられる

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