TopIto, Yoko 伊藤 洋子

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伊藤 洋子 の 詩

27時32分

薄い紅のついた煙草を
灰皿に置く友人は知らない
わたしが
今夜
ほこりだらけのサンダルで
ドラキュラのまとめ買いをしてきた帰りだということを
彼らの
小さな牙とカゴがぶつかって
そばを横切る子供は泣き出す

夕方になると家に戻された頃から
ドラキュラを買っていた
大きくなりたいドラキュラは
血を吸う 子供の血を吸う
自分だけ生き残りたいドラキュラは
仲間が眠っているうちに
少しでも多くの血を吸いに来る
けんかの声が嫌で血を吸わす
いばる教師が嫌で血を吸わす
いじめっこに会うのが嫌で血を吸わす
すぐ泣く自分が嫌で血を吸わす
牙が伸びきって滅んでも
どこかの店に飛び込めば
部屋が埋まる位手に入る
旬のないドラキュラ
血のなくならないわたし
すみかが変わっても同じ

27時32分
やっと眠りかけた体
凍えた電話の声に起こされ
わたしもしだいに凍りつく
咳こむ声と口臭で
なおさら凍りつく
自分の体を解凍したい
東の空が血に染まったら
また
ドラキュラを買いに行く

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