TopIto, Yoko 伊藤 洋子

Yoko's poem works

伊藤 洋子 の 詩

地図

靴下を織る音はもう聞こえません

米を搗く音ももう聞こえません

あの胸に広がっていた地図ももう見えません

えりの開いたシャツに隠されて

見えるのは

わたしたちと同じ色の汗

 

十九から胸に地図は出来ていた

時を経て

地上に向かって吹き上がる星屑が

彼女から生まれた子供たちの

体の中に流れていく

現実に近い形をつくるために

口から胃や腸へ流されていく

髪を伸ばすことを許されて

わたしは戸外へ出たくなる

踏みつけられる母の胸の地図

化粧が出来るようになった時

母は地図を使って

どこかへ逃げてしまった

彼女の胸を踏んだのだから

わたしの足にも地図は出来ているだろう

いまのところ

どこへ逃げていいのかわからない


 

靴下を織る音はもう聞こえません
[靴下を織る音はもう聞こえません] - 伊藤 洋子の美術

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