扉を叩くだけの騒音が
いつしか雨に変わる
降り込む雨は雪になり
稲妻が闇の部屋を光らせる
鬼
お前たちの仕業だ
さあ
出て来るが良い
あの娘の瞳から飛び出してきた
一匹また一匹と
居場所がなくなって
とうとうここに来た
わたしを喰い尽くすつもりか
忘れては困る
わたしが
お前たちを喰うことだってできる
再び瞳の中へ戻れないように
あの娘から最後に手紙が来たのは
去年の初春
一年以上も前
急ぎの仕事があると必ず連れてこられた
でも
東京に来る以外は
大阪と仙台を往復していたね
ボスと一緒に
シャッターを下げるだけで
やけに時間がかかって
真っ黒なままの手で走っても
電車一本バス二本逃してた
事務所はもうないのよと
逆に知らせてくれたのは
あなただった
慣れた手つきでキイを叩く
左の薬指には
少し大きめのリング
子供の頃から伸ばしている髪
既に
わたしの瞳の中には
年老いた怪物たちが
ごろごろいたのかもしれない
電話を出るのは
こちらの役目だった
昼間のように明るくなった
荒野(こうや)
扉があったことも嘘みたいで
鬼たちと
立ちつくしている
本当の年齢を教えてくれなかった
あの娘にいらだちながら
頭も体も白くさせて
立ちつくしている
*** [扉] の字の一画目は、本当は [一] ではなく [ノ]。
**2 [扉] の字の一画目は、本当は [一] ではなく [ノ]。
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