TopIto, Yoko 伊藤 洋子

Yoko's poem works

伊藤 洋子 の 詩

13月の叛乱

を叩くだけの騒音が
いつしか雨に変わる
降り込む雨は雪になり
稲妻が闇の部屋を光らせる

お前たちの仕業だ
さあ
出て来るが良い
あの娘の瞳から飛び出してきた
一匹また一匹と
居場所がなくなって
とうとうここに来た
わたしを喰い尽くすつもりか
忘れては困る
わたしが
お前たちを喰うことだってできる
再び瞳の中へ戻れないように

あの娘から最後に手紙が来たのは
去年の初春
一年以上も前
急ぎの仕事があると必ず連れてこられた
でも
東京に来る以外は
大阪と仙台を往復していたね

ボスと一緒に
シャッターを下げるだけで
やけに時間がかかって
真っ黒なままの手で走っても
電車一本バス二本逃してた
事務所はもうないのよと
逆に知らせてくれたのは
あなただった
慣れた手つきでキイを叩く
左の薬指には
少し大きめのリング
子供の頃から伸ばしている髪

既に
わたしの瞳の中には
年老いた怪物たちが
ごろごろいたのかもしれない
電話を出るのは
こちらの役目だった

昼間のように明るくなった
荒野(こうや)
があったことも嘘みたいで
鬼たちと
立ちつくしている
本当の年齢を教えてくれなかった
あの娘にいらだちながら
頭も体も白くさせて
立ちつくしている


*** [扉] の字の一画目は、本当は [一] ではなく [ノ]。
**2 [扉] の字の一画目は、本当は [一] ではなく [ノ]。

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