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伊藤 洋子 の 詩

海賊にナイフを

今年は太陽の色がちょっぴり違います
エスカレーターが出来たばかりの駅
エスカレーターなんて昔からある駅
改札口を出てタクシーに乗る

麦粒腫(ものもらい)の慢性化している児童(こども)
右が治ったら左
左が治ったら右
眼帯でもしたほうがいいんじゃないの
ランドセルの同級生が多かった中
手さげカバンで登校してるだけでも
充分目立つのに
腫れぼったい片瞳を隠しもしないとは
タルの中に押し込められた海賊たち
でたらめにナイフで突けば
容赦なく飛び出す

高田馬場の「ハロウィン」のテーブルに
それが置いてあって
友人がナイフを握りかけた時
わたしは必死で押さえた
ただ
飛び出す瞬間の音が嫌なだけで

主婦が三〇日間も
姿を消している家へあがりこむ



彼女の場所は沢山ある
彼女の匂いはそのまま実家へ帰ってしまった
オレンジ色の窓の下
リヤカーを引っぱっていく老婆
この髪を始めとして
背中や脚に触れた男たちが
朽ちて葬られ
地底で蛆たちの餌となってほえている
形はなくなってしまっても
彼らの声は聞こえる
オレンジ色の窓を突き破って
わたしの子宮の奥に堆積される

三〇日間も
妻を自由にさせてあげている男
三〇日間も
夫を放っておける女

最初にナイフを持って近づいたのは
わたしだ
だから
何回も殺される権利がある

麦粒腫の慢性化している児童
右が治ったら左
左が治ったら右




眼帯なんて昔から必要ない
腫れぼったい片瞳を隠しもしないとは
タルの中の押し込められた海賊たち
でたらめにナイフで突けば
容赦なく飛び出す

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