この髪の毛は一日で汚れる
眠いけれど眠れない
バスルームに窓はない
この髪の毛は一日で汚れる
どんな調理法でごまかしても
嫌いな物は絶対食べたくない
この髪の毛は一日で汚れる
意識の朦朧としている
わたしをおぶってきて
毎朝 丁寧に
髪の毛を洗ってくれる
カエル
それほど長くも短くもない
髪の毛
もちろん
体も洗ってくれる
吾妻橋のそばにあった
ビール屋で
黒ビールを飲みながら
いわしの唐揚げを食べた
ところまでしか覚えていない
それからは
カエルに飼われる生活だ
隅田川の底に沈んだ記憶もない
何度デモオ答エ致シマス
春日通リデタオレテイタノデス
私ガ通リガカラナカッタラ
今ゴロアナタハ家ナキ娘
ウラメシヤ
カエルは毎夜
違った少年たちを引き連れてきて
わたしの部屋の前で姿を消す
彼のことである
おそらく
どこからか観察しているだろう
カエルの見つけてきた少年を
待っていましたとばかりに
部屋へ通すのは
プレーンヨーグルトのような日常に
ミシン目を入れたいからだ
毎夜 ひとりだけ案内される
千代紙がなければ千代紙の代りに
折ってさらに折られて
空気を加えて星の向こうへ飛ばす
地図がなければ細かく
ハサミを入れられ
色を塗られて
小さく小さくたたみ込まれる
おかげでわたしの部屋は
ありとあらゆる物が
そろうようになった
少年たちの中で
再び自分の家へ
帰った者はいない
カエルにわかるだろうか
わたしはその中の
誰とも寝なかった
カエルの手が
頭の上で動いている間
昨夜
時計にしたばかりの
少年の声を思いだしている
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