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伊藤 洋子 の 詩

帰還

kikan / 帰還

雪降る第五金曜日

午前中まであいつの横たわっていた

ベッドに腰かけて

猫の蚤をつぶしていたら

ブザーが鳴った

私を産んで死んだ母

ボストンバッグと紙袋の小さいのを持って

立っていた

何よりもその太鼓腹

一般家庭では

とっくに買物を済ませて

夕餉の準備を始める時間

やばいなア

何にも買ってなかったよ

帰ってくるならひとこと言ってほしかった

積もる間もなく闇に吸い込まれる雪なんてさ

行く先のないスペルマみたいね

私を産んで死んだ母

今 また新たなる生命を宿している

本人は男の子を産むという

ふたまわり違う私の弟を産むという

母は確かに男の子を産んで

すぐに冥界へ戻ってしまった

この子が二〇歳になるまで

めんどうをみるのは私だ

ミルクをやり おしめをとりかえ 眠らせ

おしめをとりかえ ミルクをやり 眠らせ

ミルク おしめ 眠り おしめ ミルク ミルク 眠り  おしめ

男とは別れた

大事にしていた猫も去っていった

大病も誘拐も事故もなく

二〇年たった

弟は私からいよいよ

独立するという日の前日

三歳年上の女を妊ませたことを語った

二〇歳の若さで

子供なんてつくるんじゃないよ

私でさえやっていないことを

ふざけんな

このやろう

弟は女と旅に出た

子供が産まれるとすぐに

私に押しつけたまま

娘か息子かはっきりわかりもしないで

二〇年後

弟の子供は美しくなった

生物学的に見ると私の姪だ

言いよる男が多くても

彼女は結婚否定主義者だった

とっくに閉経している私は

楽といえば楽だった

悲しいといえば悲しかった

二〇年とたたないうちに

切符を受けとった私は

現世の人間ではなくなった

針の山でエアロビックスをしてたら

姪が手紙をつけて子供を送ってきた

地獄に来てまで子供の世話

自分の子供なんて

一匹も産まなかったのに

日付のないここじゃ

二〇年なんてとても育てられないよ

そうね

ほんの二〇日間ならめんどうみてもいいけど

〝洋子〟 と命名して

二〇日たったら送り返してやるよ


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Yoko の 声 が つぶて と なり 降り注ぐ。後半はまた、Hideki の [トボけ芸] 炸裂。評判の舞台。

1997/11 の舞台ですが、後世 (2006年あたり) の [母乳パフォーマンス] ブームの先取りでもあったりして。

舞台内容については、下記を click !

Kikan
[帰還]

performance [帰還] (画像 / 当時 の 打合せ memo 付)kikan / 帰還

文化祭の女王 !?

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