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伊藤 洋子 の 詩

ゴム草履のおばさん

私を私以外の人物に
することによって
満足しているあなたは
私の名前を呼んでくれない
30分も銀座線(ちかてつ)に乗ってきたんだから
と言おうものなら
私のワンピースを脱がせ
だぶだぶの襟もない上着と
短めのプリーツスカート
それと
白いソックスをはかせて
用意しておいた
ミニサイクルに乗せる
荷台には
ふとんにくるまった豚カバン
そんなかっこうをして
坂をおりていった頃
毎朝
ゴム草履のおばさんとすれ違った
母の友人でもなし
友人の母でもない
ふくよかであるにもかかわらず
顔色の悪いこの女に
どうして
おはようございます
を言っていたのだろう
彼女は愛する男を独占できなかった
その証拠に生まれた家の姓を名のってた
彼女が亡くなったと
きかされた頃
私は電車通学になっていた
何度か髪型を変えたつもりでも
気がついたらまた同じようにしている
目の前にいる男は
私をテーブルにつかせ
最初よりいい服を着せて
高いカクテルを頼んでくれる
今夜一度逢うために
何通りの人物になったと思うの
テーブルをはさんだ顔と顔
こんなに近いのに
あなたは今すぐにでも塔の中
ミスター ラプンツェル
長めのブロンドをなびかせ
ドレスをひきずって塔の中
私はマントをつけて
ブーツをはいて剣まで下げて
塔をよじのぼっていく
途中で梯子をはずされるのを覚悟して
あと10日で本格的な夏が
来るという日の朝
部屋で私を抱きながら言った言葉
ハヤクイイヒトヲミツケルンダ
同じようなことを
今夜も言うのだ

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