TopIto, Yoko 伊藤 洋子

Yoko's poem works

伊藤 洋子 の 詩

odd-eye (2006)

あぐらをかいた俺の膝の上
身体を丸めてねむるお前
そっと頬ずりをする
暖かい場所で眠っていることが
一番の幸せなんだね
俺の膝と限らず
置いてくれる奴なら誰でもいいのさ
すべてわかっていながら
お前を手離せない
手離す術を知らない

右は青 左は茶色 不揃いの瞳

俺がいない日は
柿の木をするする登っていく
雨が降っても平気の平左
誰もいないことに慣れている

右は青 左は茶色 不揃いの瞳

爪を出すなとは言わない
俺の心を見抜いて
顔中引っかいても構わない
逃げていかないでくれ

雨と泥で汚れた身体を
耳に水が入らないように
注意しながら
洗って拭いてやる
人の姿が見えることによって
お前は安心できるんだね
俺と限らずに甘えられる奴が
お前は欲しいだけ
すべてわかっていながら
手離す機会がない

車で遠出をする日
お前は舞台から 
くるりと回って降りた
滲みる雨 無駄なスポットライト
言いたくないよ その後は

右は青 左は茶色 不揃いの瞳
さがしたところで
そう簡単には見つからない
足元に来て身体を摺り寄せてくれ
のどを鳴らしてくれ
そんな台詞がどうしても伝わらない

お前の残した爪の痕が
壁に柱に俺の身体に
ちょっと残ってしまっているよ
そしてお前の匂いも
目を閉じて安心して任せられる場所が
この家と限らずに
お前にはきっとあるのさ
すべてわかっていながら
お前を手離せない
お前は離れていく

右は青 左は茶色 不揃いの瞳

お前は俺から離れていく

お前は離れていく


*** 当作品は、別の版が存在します。参考資料として、以下に掲載してあります。

odd-eye (1987)

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