TopIto, Yoko 伊藤 洋子

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伊藤 洋子 の 詩

時の果実

犬の遠吠えで気づく
信州から来るという
いつものりんご売り
そばとみそとりんご
流れる歌は決して
好みじゃないけれど
習慣的に買ってしまう
星の見えるりんご
赤紫色の夜が
細長く伸びて 通り抜けていく
時間なんてもの
誰でも操れるんだよ
運のいい奴ならなおのこと
ナイフに巻きつけられた夜が
足元に落ちる
匂いが消えて
色が変わるまで
ポリバケツの中でおやすみ

裸の少年はうつぶせのまま
水滴のついた りんごをかじる
何げなしに口に運ぶまで
形をくずすことは許されない
笑顔が星を呑み込む
遅れた秋の翼たち
彼を抱き寄せて
鉛色の空を飛んでいけ

ポリバケツをひっくり返すと
星は一粒一粒
疑問顔した虫になっていた

今度お互いの声
はっきりと拾えたなら
星の河を背に抱き合い
体温の違いというものを
あらたに感じとり
ふたり

雨のように
溶けていっただろう

あなたは時計の中に閉じ込められて
内側から腐っていった
ぼくは闇の中に放り出されて
体中凍えてしまった

右の瞳の中にある髪の毛
氷の手で触れて
後ろを振り返ってみても
あの光沢は失ったまま
左の瞳の中にある骨一組
冷たいこの手に抱えて
気まぐれに愛してみても
もう答えてもらえない


※ 一九八五年六月ににこの詩の原形は出来 ました。その当時
  「あなたは愛の中に閉じ込められて」
  だったのですが、2年後、訳あって
  「愛」が「時計」に変わりました。
  また、第二連
  「裸の少年は~鉛色の空を飛んでいけ」
  を加筆しました。
  加筆訂正が良かったのか、悪かったのか
  なんて たいして問題ではない。(作者)

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